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外国人の強制送還はどのように行われる?【退去強制について】

外国人の強制送還はどのように行われるのか?

「外国人が強制送還された」という話は皆さんどこかで聞いたことがある言葉でしょう。ですが、実際に強制送還とはどのようなものかと聞かれれば、具体的には思いつかない人も多いのではないでしょうか。

この記事では外国人の強制送還とはどのようなときに、どのようなプロセスを経て行われるのかについて。また、強制送還された場合に科される罰則についても解説していきます。

目次

強制送還を法律上では「退去強制」という

入管法24条には「退去強制」というものが定められています。

これは、日本へ在留する外国人が退去強制を定めた事由に該当する場合に、強制的に退去させることができる旨を定めている法令で、正式には「日本国家が好ましくないと認める外国人を行政手続きによりその領域外に強制的に退去せしめる」という文言となっています。

ここで言われる「退去強制」という言葉を分解して分析してみましょう。

退去強制という言葉の意味
「退去」とは?

日本国の領土・領海・領空の範囲内から外へ出る。帰国すること。

「強制」とは?

力を用いて、実際に退去行為を行わせること。

「退去+強制」とは?

実行力を用いて、日本の領土領海領空の範囲内から外へ連れ出し、外国人の国籍がある国へ帰国させること!

つまり「退去強制」とは、実際に力を使って、無理やり自分の国籍がある国へ帰国させるという意味の言葉です

ひと言でいえば、強制送還のことです

実際に力を使うので、警察や入国警備官が、あなたの家や会社などに直接来ます。そのうえ手錠をかけられてパトカーに乗せられ、警察署へ連行されてしまいます。警察署から一週間程度で入管へと移送され、入管の収容施設に収容されてしまいます。

退去強制は行政処分であって刑法で定められる刑罰ではありません。

強制送還の対象となる外国人は?

強制送還の対象となる外国人は入管法24条で多岐にわたり定められており、大まかな該当行為は以下の通りです。

これらのうち強制送還の対象となる代表的な行為は「不法残留者」「資格外活動者」などで強制送還のよくあるケースとなっています

該当行為入管法24条
不法入国者1号
不法上陸者2号
在留資格取り消し制度該当者2号の2・2号の3
不法残留者2号の4・4号ロ・6号・6号の3・6号の4・7号・8号
偽変造文書を作成・提供した者3号
外国人テロリスト3号の2・3号の3
不法就労助長者3号の4
在留カード等を偽変造した者3号の5
資格外活動者4号イ
人身取引の加害者4号ハ
刑罰法令違反者4号二・ホ・へ・ト・チ・リ
売春関係業務従事者4号ヌ
不法入国・不法上陸・不正上陸等幇助者4号ル
暴力主義的破壊活動4号オ・ワ・カ
利益公安条項該当者4号ヨ
国際競技会等に関連して暴行等を行った者4号の3
仮上陸条件違反者5号
退去命令違反者5号の2
出航前帰船条件に違反して逃亡した者6号の2
出国命令を取り消された者9号
難民認定を取り消された者10号
入管法24条より

ただし、上のリストのなかで「不法残留者」、つまりオーバーステイの場合は、出国命令制度の対象にもなります。この場合、通常5年の上陸拒否期間が1年に軽減されるので、以下の記事で要件をチェックしてみてください。

強制送還のプロセス

では、実際に強制送還(退去強制)の手続きが行われる際のプロセスを見ていきましょう。

退去強制は大きく分けると以下の6つのステップからなります。

STEP
入国警備官の違反調査

入国警備官による外国人の入国上陸在留に関する違反事件の調査が行われます。

退去強制事由に該当する疑いのある外国人を取り調べ証拠を捜索・押収する等の調査活動を行います。

退去強制事由に該当すると判断するに足る相当な理由がある場合は収容令書によって収容されます。

STEP
収容令書による収容

収容令書による収容は30日以内と決められています。入管はこの期限内に退去強制令書を発布するかしないかを決定します。

一方、被収容者をである外国人側も最短で30日以内に身柄解放のための仮放免申請や在留特別許可取得のための立証活動を行う必要があります。

STEP
入国審査官による違反調査

入国警備官から引き渡しを受けた入国審査官は当該外国人に退去強制事由があるかどうかを審査します。

取り調べの結果入国審査官が退去強制対象者であると認定し、当該外国人もそれを認め帰国する場合、退去強制令書が主任審査官により発付され退去強制に付されます。

一方、当該外国人が退去強制事由を認めたうえで在留を希望する場合、口頭審理と法務大臣に対する異議の申出を行う必要があります。尚、入国審査官が当該外国人が退去強制事由に該当する旨を通知した際に口頭審理を請求しなければ法務大臣による在留特別許可を得ることはできません。

STEP
特別審理官による口頭審理

外国人が入国審査官による違反審査の認定を争い、または認定結果は争わないが在留特別許可を求める場合には違反審査の認定通知を受けた日から3日以内に口頭で特別審理官に対し口頭審理を請求することが可能です。

STEP
異議申し立てに対する法務大臣による裁決

外国人が退去強制事由に該当する旨の口頭審理の判定を争い、または判定結果は争わず、在留特別許可を求める場合、当該外国人は判定通知を受けた日から3日以内に不服事由を記載した書面を主任審査官に提出して法務大臣に対し異議の申出をすることが可能です。主任審査官は法務大臣に対して、違反調査、違反審査、口頭審理で作成された、事件の記録などを提出し法務大臣は異議申し立てに理由があるかを裁決します。

法務大臣が退去強制事由に該当し、かつ在留特別許可も認めないと判断した場合、「異議の申出に理由がない」との裁決が出され主任審査官が退去強制令書を発付することになります。その場合、当該外国人は被退去強制者として日本から退去強制させられることとなります。不服がある場合、再審情願または行政訴訟を行います。

STEP
強制送還

退去強制令書が発付されると、入国警備官は被退去強制者を速やかに送還しなければなりません。

被退去強制者を直ちに送還できない場合は、送還可能な時まで収容することができます。

この際、収容令書とは異なり、収容可能な期間の制限が定められていないので無期限に収容できることになります。

このような収容から身柄を解放される手段としては、「仮放免申請」または司法手続きである「退去強制令書発布処分の取り消し訴訟」およびそれに伴う「執行停止申立て」が存在します。

退去強制事由に該当するか否かの判断は、①入国審査官・②特別審理官・③法務大臣の3者による審議によって決定されます。

送還費用は誰の負担になる?

強制送還が行われる際の送還費用負担には大きくわけて3つのケースがあります。

送還方法該当ケース
自費出国自分のお金で帰国するケース
運送業者による送還飛行機会社などが費用を出すケース
国費送還税金で費用を出し、強制的に帰国させるケース
自費出国

ひとつは自費出国です。

自費出国は、自分で送還先までの飛行機代や旅費を支払う方法です。3つのタイプの中でもっともよく見られます。

運送業者による送還

ふたつめは運送業者が旅費を負担し送還するという方法です。これは以下のケースのみ行われます。

  • 上陸審査で上陸拒否を受けた場合
  • 仮上陸条件違反者
  • 退去命令違反者
  • 出航前帰船条件違反逃亡者等
国費送還

さいごは国費による送還です。

これは費用を工面できない者に対して国費、つまり税金で旅費を負担し送還するという方法です。入管がチャーター便を用意し被退去強制者を退去強制令書が出された直後に国費で送還してしますケースも存在するようです。

送還先は原則国籍や市民権が属する国となる

強制送還を受けた場合の送還先は、原則外国人が国籍や市民権が属する国とされています

仮にそれらの国に送還できない場合は、本人の希望により日本に入国する以前に住んでいた国などに送還するケースも存在します。

このようなケースの場合、送還先は以下のいずれかとなります。

その他の送還先のケース
  1. 日本に入国する以前に居住していた国

日本入国の直前に居住していた国がある場合は候補となります。

  1. 過去に居住歴のある国

生まれた時から現在まで、住んでいたことのある国があればその国も候補となり得ます。

  1. 日本へと出航する船舶に乗った港が属する国

船舶で日本へ来た場合に、その日本行きの船に乗船した港の国が候補になります。

  1. 当該外国人の出生地が属する国

送還される外国人の生まれた場所を出生地といいます。この出生地が属する国が送還先になります。

  1. 当該外国人の出生時にその出生地が属していた国

送還される外国人が生まれた時点にその出生地が属していた国が送還先となります。

  1. その他受け入れを表明している国

送還を希望しても、送還先の国が拒否すれば送還することはできません。また、送還先には難民条約33条1項に規定される「ノン・ルフ―ルマンの原則」によって、送還が禁止された国は含みません。

「ノン・ルフ―ルマンの原則」とは?

「ノン・ルフ―ルマンの原則」とは、難民条約33条1項に規定されているように、仮に「送還された場合に、当該外国人が政治的な立場、意見などを理由に迫害を受ける可能性のある国等には送還しない」という原則です。

退去強制を受けるとペナルティがある

退去強制、つまり強制送還を受けてしまった場合、日本から帰国させられることに加えてほかのペナルティも科されてしまいます。

一度強制送還されると、その日から5年間は日本に入国できなくなります。

また、2回以上強制送還されてしまった場合は、さらに重い10年間日本へ入国禁止が科されてしまいます。

そのため、日本に結婚した彼氏や彼女、子どもがいる場合、何年もの間、離れて暮らさなければならなくなるケースも存在します。

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